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砥石の面直しの方法

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三面摺りによる面直し

ここでは、砥石の面直し(つらなおし)の方法について説明しています。初心者の方に向けて、主に中砥石(キングの1000番など)の面直しを前提として説明します。

三面摺りという3枚をすり合わせる方法です。

使うとへこむ砥石

 砥石を使って刃物を研ぐと、刃物が研がれるのはもちろんですが、砥石も消耗します。図のようにへこんだ砥石の表面を、平面に直すのが面直しです。

 面直しがなぜ必要かというと、へこんだ砥石で研いだ刃は丸くなって、切れ味が落ちます。そしてもし中研ぎの段階で刃が丸くなると、その後の仕上げ砥石がそもそも効かなくなります。

へこんだ砥石同士をすりあわせる

 というわけで砥石の面直しをしよう!!面直しの方法はたくさんありますが、ここで説明する方法は一つ。すり合わせです。

 できれば同じ種類・同じ粒度、同じへこみ具合の物をすり合わせましょう。図を見てください。へこんだ面とへこんだ面を合わせてすり合わせます。すると、端の方から順に、お互いがお互いを削りあって、最終的には平面になります。

 やったー!面直し成功です。

落とし穴が

ぴったりと合わさったものの、平面にはなっていない

 しかし、これは図の中だけの話です。なぜなら、最初の前置きにある、同じ種類・同じ粒度の砥石は用意できても、全く同じへこみ具合の砥石を用意するのは無理だからです。

 これは極端な例ですが、まっ平らな面とへこんだ面をすり合わせたとします。すると図のように、凹面と凸面に変形した状態でぴったりと合わさります。

 実際に面直しをしていて、2枚の砥石がぴったりと合わさると、いかにも平面と平面で合わさっているように感じてしまうものです。上の1枚だけ握って持ち上げると、下の1枚もひっついたまま持ち上がったりします。なのでぴったり合わさっていることは間違いありません。

 ですが理屈の上で考えてみると、平面であると言い切ることはできません。

 平らな砥石は、直すべきへこんだ砥石に端を削られて凸面になり、へこんだ砥石は、ある程度直されてへこみが穏やかになりますが、平面ではありません。すり合わせると、こすれた部分において両方の砥石が摩耗していくため、当然の結果といえます。

 この対策として、同じ種類(研磨力・堅さ・大きさが同じということ)、同じ粒度、へこみ具合も同じ砥石を用意するということなんです。そして、両方が同じに削れて水平な状態で合わさることを目指します。

 しかし前述のように、へこみ具合が同じになるように砥石を使うというのは、現実的に考えて無理があります。

頼みの綱は三枚目

3枚の砥石を順にすり合わせる
凸は凸とすりあわせる

 これを克服するためには、3枚目の砥石を用意します。

 3枚目の砥石も使用後なので、当然へこんでいます。そこで図の2と3のへこんでいる同士をすり合わせます。ですが結局同じことが起こりました。2と3も凹面と凸面で合わさってしまったのです。しかしまったく同じ結果ではありません。へこみ具合は先ほどよりも穏やかになっています。

 そして今度は凸面になった同士(1と2)をすりあわせます。凸面同士のすり合わせでも、最終的には凹面と凸面で合わさります。なので、また3と凹面になった方をすり合わせるのです。

 というふうに、凹面同士、凸面同士をすり合わせることを繰り返し、どんどん精度を上げていくのがこの面直しの方法です。

 この方法の良いところは、道具が必要ないということです。キングの1000番の砥石を3つ買ったとして、いずれ使い切るとしたら無駄ではありませんし、もともと消耗の早い物です。また人工砥石ならなおさらですが、砥石は両面使うことができます。2つだけでもなんとかなります。

 この方法の悪いところは2つあります。1つは理論上永遠に水平にならないことです。これの対策はすり合わせを繰り返すしかありません。

 もう一つは、極端にへこんだ砥石を直すのに適さないことです。最初に書いているように、この方法はへこみ具合が同程度の砥石を用意することが前提です。1つの砥石を連続して使いすぎたためへこみすぎた。それを直すためには、もう1枚を連続して使って、意図的にへこませないといけないことになります。うーんまったくばかげていますね。

 極端にへこんだ砥石を直すには、仕上げ砥石なら中砥石、中砥石なら荒砥石で直さないとものすごい時間がかかります。つまり研磨力の強い奴でだーっとやるということです。もしかしたら、面直し専用の砥石が必要かもしれません。

 この対策は簡単です。極端にへこまさないことです。そのために、頻繁に面直しをしましょう。2枚1組で1手のすり合わせだけでも、ある程度平面を維持できます。それに、へこみが穏やかな内に直す方が、面直しによって失う砥石の量を減らすことができます。

 便利なものでダイヤモンド砥石というものがあります。ダイヤモンドの粒子を鉄板にひっつけたものです。少々値は張りますが、研磨力がすごく高い点と、平面が維持される点が優れています。そしてホームセンターで買えます。

 なので、ダイヤモンド砥石で面直しをすると、へこんだ砥石だけがモリモリ削れてすぐに直ります。さすがはダイヤモンドパワー!!!!砥石相手でもすり減るなんてことは――

ダイヤモンドは無敵か

 無敵に思えるダイヤモンド砥石ですが、その研磨力も無限ではありません。鉄板に粒子をひっつけているという作りのため、粒子がはげることがあります。ダイヤモンド砥石も消耗するということです。

 私はダイヤモンド砥石は安いやつしか持っていませんので、高価なちゃんとしたものを買えば、長持ちして堅い刃の研ぎにも面直しにも活躍してくれることと思います。しかし、面直しはこまめに丁寧にしていれば、そもそもすり合わせで十分です。ダイヤモンド砥石を面直しに使うというのはもったいないことだと思います。

 そしてダイヤモンド砥石がいくら平面を維持してくれたとしても、それをこすりつけるのは人の手です。端の方にだけ力がかかったりすると凸面になるかもしれません。

 というわけで、初心者の方にはなおさら、同じ砥石によるすり合わせの面直しをお勧めします。

 この方法で中砥石の平面を維持できるようになれば、仕上げ砥石の面直しは、その中砥石で行えば十分になります。ですが当然凹面と凸面で合わさることがここでも少しは起こります。精度を求めるなら仕上げ砥石同士のすりあわせですが、人工でも割と高価な仕上げ砥石を複数そろえるのはさすがに負担になるかと思います。ですからとにかく、すり合わせの面直しはこまめに行うことが肝要です。

 このように書くと「それじゃあやっぱりダイヤモンド砥石で中砥石も仕上げ砥石も直せばいいじゃん。」と思う方がいるかもしれません。実際私は面直しの苦しみに耐えかねて手を出しました。

 しかしこれは面直しに限ったことではないですが、道具の性能に頼るのには限界があります。ダイヤモンド砥石の安いやつぐらいならまだいいですが、金銭的な制約も受けることになります。そしてなにより、根本的には技術の習熟がどうしても必要になります。それには練習あるのみなのです。

 ですから今まさに面直しで苦戦しているという方には、すり合わせの方法を使っていただきたいです。

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